経済・文化評論室

エコノミストであり、物語を愛するヲタクでもある。

The Intouchables

The Intouchables(邦題:最強のふたり)視ました。全く前提知識ゼロだったので、英語の勉強しようと思って視たのにフランス語でビビりました。正にいい映画!って感じで後味が爽快な感じです。

あらすじです。メインの登場人物は、スラムに住む黒人のドリス(Driss)と、自己で首から下が不随になった富豪のフィリップ(Philippe)の2人です。生活保護を受けるために"面接に落ちた証明"が欲しいドリスは、わざと落ちるためにフィリップの介護の職に応募します。しかし、そんなドリスの思惑とは裏腹に、フィリップは自分に同情的な介護士たちに嫌気が差していたためドリスを採用することにします。果たしてドリスはフィリップの介護の仕事をすることになるのですが、最初は真面目にやらずに好き放題やってフィリップに呆れられてしまいます。しかし徐々に真面目に仕事に取り組むようになり、ドリスの同情的でない自然な思いやりが明らかになるにつれ、二人の間の中は深まっていきます……。

 

とりあえず印象。ヲタク脳なので、富豪と使用人の絆という関係が、古くはハヤテのごとく!とか、最近だとつりおつとかを思い出させて、あぁこれは普遍的に良い設定なんだな!と確信しました。えぇ。付け加えて、少し意地悪な言い方をすると、ドリスのやることなすこと(タバコだとかちょっとえっちなマッサージ呼ぶとかハイソな誕生日パーティでロックを鳴らすとか)を、これまでハイソなことしかしてこなかったフィリップがことごとく気に入る感じもご都合主義的なアニメっぽいと感じてしまった部分はあります。しかし、この映画はそういう面を補って余りあるほど良いものだと思います。

一つ印象に残ってるセリフは、落ちるために面接受けたのに受かってしまったドリスがこんな仕事やりたくないと言ったシーンで、フィリップが「君は(生活保護で)他人におぶってもらって生きていきたいのか?」と問うたのに対してドリスが「お前はどうなんだ?」と返すシーンです。これをみて、あぁそうか、2人は両方とも弱者なんだなぁとrealizeしたのです。2人がこの後徐々に分かり合えるのは、弱者という共通項があるからなんだな、と妙に納得しました。

あと、最後のシーンが凄くかっこいいと思いました。終盤の展開は次の通りです。家庭の事情でドリスは惜しまれつつもフィリップの元を去ることになります。しかし、フィリップは新しい介護士とそりがあわず、しばらくたったある日、ドリスを呼び出します。ドリスはフィリップを連れ出すことにします。フィリップの高級車を飛ばしながら、時には警察に追われながら上手くかわしつつ(これが実は映画の冒頭のシーンなのですが、これもまた良い)、海辺のコテージ(?)へとフィリップを連れていきます。そこで2人は、介護士に触らせなかったがゆえに伸び切ったフィリップのひげをおもしろおかしく剃ったりと、ひとしきりじゃれあいます。2人はその後、海が見える高級レストランにランチに出かけます。しかし、ドリスは、「ここに座るのは俺じゃない」と言って席を立ちます。フィリップは「何を言っているんだ?」と驚きます。さて、時をさかのぼって劇の途中、フィリップが、半年間文通して精神的に充実した交流を経た女性と、勇気を出してデートしようするシーンがあります(このデートの約束自体も、ドリスの突飛な行動のおかげで実現しています)。しかしこのときは、何の入れ違いか、女性が約束の時間にレストランに現れず、フィリップは失望します。実はドリスは、この海辺のレストランに彼女を呼び寄せ、フィリップと彼女とのデートを実現させたのです。窓からフィリップに手を振りながらドリスは海辺を歩いて去っていきます。

実はこの話は実話に基づいていて、最後に(現実の)フィリップが再婚したという事実と、(現実の)フィリップと(現実の)ドリスは今でも仲良くやっているという事実が明かされるのですが、個人的にはこの最後のシーンを踏まえて、フィリップとドリスはこれで最後の別れであって欲しいです。ドリスは去らなくてはいけない。でもフィリップはドリスを呼び出してしまった。そこでドリスは、自分がいなくてもフィリップが生きていけるために、フィリップの再婚を実現させて去っていった…。そう考えると、すげー切ないしドリスがめちゃくちゃかっこよくないですか?僕だけですか。まあぶっちゃけ英語がよくわかってないから僕が状況を勘違いしている可能性もありますけどね。えぇ。

 

付け加えていうと、ピアノ主体の劇伴がとてもよかったです。

 

以上