経済・文化評論室

エコノミストであり、物語を愛するヲタクでもある。

WILD CHILD

視ました。邦題はワイルドガールです。ドタバタコメディです。

ざっくりあらすじを完全ネタバレ込みで言うと、ビッチでパリピ過ぎる主人公(LA在住)が、ビッチ過ぎる生活態度を改めるためにパパにイギリスの全寮制の女子高にブチ込まれます。ビッチでパリピの主人公は、貞淑で厳格なその学校のカルチャーに馴染むことが出来ず、友達も誰も出来ない上に、HEAD(学級委員長?)の生徒にも目をつけられます。学校を脱出したくてしょうがない主人公が試みたのは、ルームメイトたちと協力して悪事を重ね退学になることでした。しかし、図らずもその過程でルームメートたちと仲良くなります。また、ホッケーの才能を生かし、チームのキャプテンとなって学校に勝利をもたらすなど、徐々に学校に馴染んでいきます。そんな折、ルームメイトたちの悪口を書いたメールが主人公名義で張り出され、せっかく仲良くなった彼女たちと破局してしまいます。また、ライター遊びが原因で火災を起こし、校内裁判によりあわや退学という事態に。しかしこれらはいずれも、主人公を追い出したいHEADが仕組んだことでした。裁判の過程でそのことが露見し、主人公の疑いは晴れ、ルームメイトたちとも仲直りします。数か月に学校に訪れたパパが見たのは、成長した娘の姿でした…。

 

感想。普通に良いエンタメだと思います。テンポよし。展開はベタなものが多いので安心して視れます。個人的に面白かったセリフは、HEADにこの学校のヒエラルキーについて教えられたときの主人公の「ここはホグワーツかよ」っていうセリフと、主人公のビッチな服装を見たときの先生の「ここはアムステルダム置屋じゃねーんだ」みたいなセリフですね。主人公はどうしようもないDQNだけど、最初嫌ってたルームメイトたちと仲良くなっていく過程はほっこりしますね。

少し分析的に言えば、上のあらすじには書いてませんが、(普通にみてたら当然わかりますが、)この物語は母親を交通事故で失った主人公の心の喪失を徐々に埋めていく物語です。主人公のビッチでパリピ過ぎる私生活も、喪失感を埋めるための行動と考えれば納得です。主人公は幼いがゆえに、LAでは本当の友情ではなく、表層的な付き合いでしかないパリピ友達ばかりを集めてしまいます。しかし、イギリスの学校では、真の友情を手に入れることが出来ました。また、物語の終盤、実は母親も同じ学校出身で、しかも主人公と同じくホッケー部のキャプテンであることが判明します。学校の中(と恐らくは自分の中にも)に亡き母親の面影を見つけ、はじめて真に母親の死を消化したと言えるでしょう。このように、真の友情と母親の死の消化の2つを経て主人公の喪失は充足され、大人になることが出来たのです。

最後のシーンで、父親と先生が、ビッチ過ぎる脱色をやめてナチュラルブラウンの髪になった主人公をみながら「お母さんによく似てる」と呟くシーンはグッときますよ。

 

以上