経済・文化評論室

エコノミストであり、物語を愛するヲタクでもある。

七人の侍

言わずと知れた黒澤明監督の超名作、七人の侍を視ました。

大づかみに内容を説明すると、野武士に襲われてる村を、七人の個性的な侍たちが頑張って救う話です。

映画のこと全然知らない人間なので、日本映画の最高傑作とか言われているからなんか観念的でアーティスティックで難解なものかと思ってたんですけど、実際みてみるとアクションあり、戦闘あり、知略あり、ギャグあり、シリアスあり、葛藤あり、恋愛ありのドエンタメでしたね。

まあ僕自身映画にそんなに詳しいわけではないので日本映画の最高傑作と言われるまでに何がそこまで評価されてるのか正直なところ一回視ただけではわかりませんでした。しかし、60年前の白黒映画で、おまけに3時間半という長時間の映画なのにも関わらず、見始めたら普通に楽しんであっさり見終わってしまいました。冷静に考えるとそれってすごいような気がします。カット割りや役者の演技は俺がわかる程度に秀逸ですし話のテンポもよいので、白黒画面な上にセリフも聞き取りづらいというマイナス面はありますが、非常に没入感があります。

 

以下、印象に残った点。

 

三船敏郎演じる菊池代

普通にこの映画をみて印象に残ったキャラを挙げろと言われたらまあ大体の人は島田勘兵衛(志村喬)か菊池代(三船敏郎)を挙げるでしょう(あるいは久蔵か)。ここで農民を挙げる奴はヒネり過ぎだから肩の力を抜いた方がいい。

菊池代のこの映画での役割を物語論的な言葉で説明すると、トリックスターです。侍を名乗りますが、実は農民の出で、侍らしからぬ振る舞いをしては勘兵衛らに笑われてしまいます。しかし、その侍らしらぬ振る舞いは、まあトラブルもよく招くのですが、実はいくつもの重要な局面でブレイクスルーを生み出すのです。

作中で作られる旗は、6つの〇と1つの△が記されています。6つの〇はほかの侍で、△が菊千代です。明らかに異質な存在ですが、それが状況を打破するカギとなる。DIVERSITY IS IMPORTANT. Akira Kurosawaはそう伝えたいのです(?)

 

②民衆の愚かさ

なんかいちいち農民が愚かなせいでひっかきまわされるんですけど、人間だものって感じですね。それを以ってAkira Kurosawaが何を伝えたいのかクリアにわかったわけではないですけど、やはり人間を描きたかったんじゃないですかね?

 

③アクション半端ない

ひたすら落馬しまくるんだけど、マジでどうやって撮影してるんですかね?野武士との最終決戦の日とか、雨めっちゃ降ってるんですけど、地面グズグズの泥まみれの戦闘とか、半端じゃない迫力ですね。

 

④説明過多でない

まあ映画って普通こういうもんなんでしょうか?例えば登場人物たちの事情ですが、基本的に深くは語られません。代わりに、印象的なカットで断片的に提示されます。Don't think. Just Feelってことでしょうか?先述の菊千代もそうですが、彼の過去を語る描写は、野武士の襲来によって両親を失った赤子を抱きしめ、「これは俺だ」というシーンのみです。そして、そのシーンが強烈に印象的で、細かい事情はよくわからないものの、彼のエキセントリックな行動をすべて納得してしまうんですよね。引き合いに出すのもおかしいですが、ラノベや漫画だったら、突然菊千代が長々と自分語りを始めたりしますよね。

 

以上